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就活と採活と生活

採用広報・広告を創る立場から就活のあれこれを書いてます。

ふたつの話

今日は前から紹介したいと思っていた二つの話を紹介します。
まず新入社員の話。
彼は想定していた仕事と全然違うことで悩んでいた。「商品企画部ということで入社したのに、3ヶ月も経つのに来る日も来る日も、コピー取りや届け物などのお使いや書類の整理ばっかり。たまに企画書の一部を手伝うくらい。こんなくだらない雑用ばかりやるためにこの会社に入ったのではない。この会社にいても自分は成長できない。だから辞める!」この人の意見に賛成ですか?それとも反対?
「そんなの契約違反じゃん!そんな会社辞めちゃえば。もっといい会社あるし。」私も若い頃ならこう思ったでしょう。でも私としては別に反対するつもりはありません。職業選択の自由は保障されています。ここはダメだと自分で判断したのだから、それはそれで尊重されるべきかもしれません。すべて自己責任の社会ですから。
しかし、次の会社の面接で必ず聞かれるのが退社理由です。「いや、なんか雑用ばっかりで仕事らしい仕事をするチャンスを全然与えてもらえませんでしたので・・・」というと、「はい、わかりました。本日はありがとうございました。」といって後日、面接結果を通知しますと告げられるでしょう。
思い起こせば、あのとき内定をもらっていた別のB社に入社すればよかった。失敗した、騙されたと思うかも知れません。でも、ちょっと待ってください。会社というところは、基本的に一人ひとりが能動的に動くことで成り立つ構造になっています。それが「プロの仕事」です。それ以外は「作業」です。その作業の指示をもらって作業だけをしている人は、作業員というレッテルを貼られ、そういうポジションに就かされ、そういう待遇を用意してくれます。
学生時代は勉強すれば成績という形で評価されます。これは一人でもできます。しかし会社は仕事をするところです。仕事には相手があります。得意先、関係先、同僚、上司、後輩などいろんな人のつながりのなかでやるものです。学生時代は、友達と教授と家族親類くらいしかなかった関係が、経済活動をする会社に入社することで複雑な人間関係のなかで生きていくことになります。
ベテランの社会人でもこの人間関係で会社を辞める人が多いのも頷けます。それくらい会社員にとって人間関係というのは大きな要素です。
もともと会社に雑用なんていうものは存在しません。どんな作業でも掃除でもすべて会社という人間の集合体をうまく機能させるためにあります。世の中には安心して仕事ができるようにするための仕事もあることを忘れないでほしいと思います。人間関係をうまく保つための保全工事も必要です。それを手抜きするとヒビが入って最後には破裂するのです。
予断ですが、昭和の天皇陛下が草むらを歩いておられた時に「これはなんていうのですか?」と側近の人に尋ねましたところ、その人は「あ、それは雑草です」といいました。天皇は「雑草という植物はありません」と答えられたという話がありました。(すみません、この発言の正確さに自信がありませんがそのような会話があったことは確かです)。


次はある住宅メーカー営業数年目のAさんの話。
住宅の建て替え予定のある見込客のお宅に何年も通い、成績にもならないいろんな相談にものり、資料も郵送ではなくできるだけ直接お伺いして持っていっていました。何年も通ううちに夕食まで一緒によばれるまでになり、自分は信頼されている!という確信を持っていました。
ある日、彼にそのお客様から電話が入りました。「おっ、ついに受注か!」と思ったところ、「実は先日からある住宅メーカーの方がこられてまして、Aさんには悪いけどそちらでお願いすることになりました」という話でした。彼はショックを隠せませんでしたが、「あ、そうですか」と引き下がるような人間ではなかった。しかし、その住宅メーカーは日本一のメーカーで担当もベテラン。商品力もあるし技術的な知識も経験も完全に負けていました。そこで彼はあのお客様のことに関しては、住まいに対する理想や想いはもちろん、家族構成から食べ物の好みまで自分がいちばんよく知っている。だからそのベテランでもできないことを、自分しかできないことをしようと思いました。それは立地上、工事の際にどうしてもご近所に迷惑がかかってしまうことでした。彼は、前例はないが何とか迷惑をかけないでできる方法はないかを考え、自ら調べ上げ、法的な問題も関係する役所に自分で交渉して何とか解決策を見出しました。「いちばん気になっていたことをAさんがそこまでしてやってくれたことに感動しました。」という言葉をいただき受注することができました。
仕事とは、そこまでしないといけないのか、と思った人もいるかもしれませんが、いま、どれだけ相手の立場に立って真剣に考え、その答えを提示することができるかに企業の存続がかかっているのです。Aさんは上司にいわれてやったわけではありません。もちろん受注したいということはありますが、きっとそれ以上に彼はあのお客様が工事で懸念しておられたことを解決して心から新しい家を建てる喜びを味わっていただきたい、という一心で行ったことだったと思います。
住宅というのは一生でいちばん高い買物です。そのメーカーを決めるのは商品やデザインだけではないのです。一生住まうものだから一生のおつきあいになる。だから、それを提供する会社の理念や姿勢というのは大事になってくるんですね。逆にいい加減な社員がいるだけで、そのメーカーの信用を落としてしまうことになります。ある住宅展示場で出会った一人の社員のために会社は大きな損失を出してしまうことが現実にあるわけです。一歩外へ出ると会社の代表です。一人ができることは決して小さくはないと思います。
 

これまでは自分のことだけを考えていればよかったのですが、会社というところは自分のことばかり考えていると孤独になり、やがて行き場を失います。仕事は自分のためにではなく、人のために、社会のためにするものです。その結果が自分のためになる。そういうことです。簡単でしょ!